6. 効果が確認された剤
アカリンダニ対策として、セイヨウミツバチでは主にメントールとギ酸が使われています。
アメリカではメントール、カナダではメントールとギ酸が登録薬剤となっているようです。
この他にも、チモールやヘギイタダニ用のアピバールやアピスタンも効果があるという報告があります(総説に一部修正があります)。
日本ではアカリンダニ対策剤の登録はありません。
基礎的試験としてはニホンミツバチでメントールの効果が確認され、論文として発表されました。
そこでの試験方法を紹介します。
メントール処理の方法
メントールLが使用されました。
メントールクリスタルとしても販売されています。
セイヨウミツバチでは2段巣箱で50gなので、小さなニホンミツバチ巣箱では1群あたり30gを基本とします。
インターネット販売で、100g約1000円ちょっとで入手できます(例えばこちら)。
薬局でも入手できる場合もあるようですが、高いそうです。
メントールをお茶を入れるお茶パックなどに入れます。
ミツバチが袋をかじる場合があるので、さらに網戸のネットなどで包みます。
①巣箱天井部への設置
メントールは結晶状態から、空気より重いガスになります。このため、ミツバチの巣の上部に置き、ミツバチ群の熱を利用してメントールをガス化し、そのガスが巣箱内に下りてくるイメージです。
巣箱の内ぶたをスノコ状にして、その上にメントールを置くのが簡単かもしれません。
<注意点>
・スノコの隙間がミツバチによってふさがれると効果が得られないでしょう。
・巣箱上部に換気口を開ける場合は、換気口からメントールが出てしまい、巣箱内に下りて行かない場合があります。
②巣箱内壁面に貼付け
巣箱の上部に置けない場合は、巣箱の内側の壁、蜂球に近い場所に画鋲などでメントールパックを貼り付けても効果が見られました。
③暑さ対策併用
高温による巣落ち防止の為、底面を網にしたり、巣箱上部に通気口を開ける場合があります。
このような場合、ニホンミツバチが巣門から巣内に送風行動をすることも考えると、空気の流れは下から上になります。
メントールパックを巣内壁面、巣門のすぐ上に設置すると、メントールガスが下から上部の通気口に流れて行きます。
空気の流れとメントールガスの流れを、匂いを嗅いで確認しつつ設置する必要があるかもしれません。
巣箱内が40℃以上になるとメントールが液化し、ミツバチの全滅が起こります。
巣箱上面に置くと、このような事故が起こりやすいので、真夏はメントールを取り除くか、底面に置く必要があると思われます。
④送風機の利用(冬期のみ)
冬期は温度が低いため、メントールの揮発量が少なくなります。
電池式の送風機(電池でノーマット)を用いることで揮発量を多くすることができます。
電池でノーマットの薬剤部分を取り外し、メントールをパックを入れた状態です。ファンにメントールパックがからまないように、金網(6.5cm✕6.5cm)を入れました。
送風機を底に設置した例です。
・入れ過ぎない
高濃度のメントールはミツバチに悪影響を及ぼします。
入れ過ぎないように気をつけましょう。
ミツバチが巣箱の外に出てしまうなどの異常行動が見られた場合はいったん使用を停止してください。
・高温時は控える
メントールは41-43℃で液体化し、一気に揮発量が増加します。
このような場合、ミツバチが全滅する可能性があります。
7-8月はメントールを巣箱の底に移動する、使用を中断する、量を減らすなどの対策が必要です。
・不安定な群へ処理しない
不安定な群では逃去する場合があります。分蜂後直後などに処理するのは控えましょう。
メントール試験時の注意点
メントールの蜂蜜への移行
これまでメントール試験を行った群から採取したハチミツのメントール含量を調べた結果、ごくわずかにメントールが検出される場合がありました。
その量は、最大で1.5ppmに満たないレベルです。
これがどのぐらいの量かというと、
30ppm 人が検知できる下限(Nelson et al. 1993)
35ppm 飲料における一日最大使用料(WHO+FAO,1999)
68ppm アイスクリーム(WHO+FAO,1999)
400ppm キャンディ(WHO+FAO,1999)
1,100ppm ガム(WHO+FAO,1999)
多くの食品、日用品、医療品にメントールが使用されている現状を考えると、ハチミツに残留するメントールは人間が検知できるレベルではないと考えられます。
ただし、アカリンダニ対策としてメントールが登録されていない関係で、少しでも蜂蜜に残留している場合は食品衛生法に抵触するので注意が必要です(農水省、厚生労働省の担当部局談)。
メントール残留試験を待つ蜂蜜サンプル