1. 基礎知識
アカリンダニは非常に小さなダニで、体長約150μm (1mmの1/6)しかありません。
ミツバチの胸部の気管内に寄生し、体液を吸います。
よく似た(同属の)ダニが他に2種ミツバチに寄生しますが、それらはミツバチの体外に寄生します。
アカリンダニはその一生のほとんどを気管内で過ごし、卵→幼虫→成虫へと成長します。
卵から成虫までの発育期間は、メスが14~15日間、オスは11~12日間です。
メスとオスは気管内で交尾し、気管外に出てくるのは交尾したメス成虫だけです。
気管の外に出てきたメス成虫は、ミツバチの毛の先にしがみつき、他のミツバチに移動するチャンスを待ちます(写真、赤丸の中)。
ミツバチ間の移動は主に夜間に行われます。気管外でのダニの生存時間は数時間と言われ、ダニが移動するにはミツバチ同士が密接に接触する必要があると考えられます。
新たなミツバチに移動できたアカリンダニは、ミツバチ胸部の第一気門から気管内に侵入します。
第一気門は翅の付け根付近にあり、フタのような構造があります(矢印)。
(分かりやすくするため、毛を除去しています)
気管に侵入したアカリンダニは、左図の赤で着色した部分に寄生します。
矢印が第一気門で、そこから頭部や飛翔筋に空気を送る重要な気管です。
(図:Robert Evans Snodgrass, 1956を改変)
健全なミツバチの気管(左)は、透き通るようなきれいな色をしています(矢印)。しかし、アカリンダニに寄生されると褐色になります(右)。さらにひどくなると真黒になり、弾力性のない炭のような状態になります。
気管を透過して見ると、黄色のタマゴ型のダニで、気管が詰まっているのがよくわかります。アカリンダニの卵は大きく、成虫と同じかそれ以上の大きさで、幼虫もさらに大きなサイズになります。
気管を切開してみると、卵や幼虫、成虫が混在しています。
多い時には一本の気管に70匹近いダニが入っていることもあります。